満員電車は、嫌いだ。
いつもより少し遅めの時間帯。すでに帰宅ラッシュが始まってしまったようで、人間の詰め込まれた箱の中に揉まれる。
僕の気分は下降の一途をたどっていく。正直、今すぐにでも叫びだして、地団駄を踏んで、この胸糞悪い気分を、周りの人間ごと振り払いたかった。でも結局、それは理性で押さえつけるに足りる程度の衝動で。最初から、実行する気はない。
今日は二月十四日。世は“バレンタインデー”だ。
そして――今年のそれは、僕、内藤慎弥にとってあまりにも特別だった。
- Pocky Boy -